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続々 書く力

前回から引き続き私自身の経験から導いた文書の作成ポイントについて、紹介したいと思います。基本的には、前回に紹介したメールを書く際に意識するポイントを押さえていれば、それほどおかしな文書にはならないはずです。付け加えるなら、あなたの文書を読む読み手の立場になって文を作れているかがより重要です。「自分は上司ではないのだから、わからなくて当然」などという意見も出てきそうですが、どちらかというと役職は関係ありません。読み手の立場になるとは、読む人間が書き手である自分とどの程度の背景や知見を共有していて、何が知りたいかを理解することです。「読み手が上司であれば、当然自身の取り組んでいることにも詳しいだろう」という認識はたいてい誤りです。むしろ担当であるあなたのほうがよほど詳しい場合すらあり得ます。

そこで熟慮しなければならないのは、自身が伝えたい事柄に対して読み手はどこまで知っていてどこから情報を加える必要があるかを見極めることです。文書はシンプルであるほどわかりやすくなります。ただし、シンプルすぎて読み手が必要としている情報まで削られれば、伝えたい情報が伝わらなくなります。そのため、読み手の立場になることが重要なのです。

もう1つ、個人的な経験から注意したいポイントを紹介します。それは「造語」です。よくあるパターンが二字の漢字を組み合わせて、四字の漢字を作り出してしまうことです。例えば、「仮想反映」という言葉を見たとき、あなたはどう解釈するでしょうか。この言葉は「仮想」「反映」という二つの言葉をつなげていますが、辞書には四字の言葉として載っていません。このような自身で勝手に創作した「造語」があると文は途端に解釈することができなくなります。解消するのは簡単で、こうした造語を文から排除し、辞書に載っている言葉のみで言い換えてください。これだけで文として成立するようになります。造語かどうかわからなかったら、使うのをやめるか辞書を引いてください。「なんだそんなことか、言われなくてもわかっているよ」という方はぜひそのまま続けていただければと思います。

以上を試してもそれでも「お前の書く日本語はわからない」といわれてしまったら、もう一度ご自身の文を見直してみてください。どこかにこれまで紹介したポイントに反する箇所が見つかるかと思います。どうしても見つからないなら、それは「日本語がおかしいというよりロジックがおかしい」のかもしれません。例えば「ソクラテスは死ぬ」という三段論法の有名な文で考えると、あなたのいまの文では、「なぜ」ソクラテスは死ぬのかの理由が不明瞭なのかもしれません。この場合、「人間はみな死ぬ」「ソクラテスは人間である」という前段(理由)があって「ソクラテスは(人間なので)死ぬ」という納得感がある文となります。

繰り返しになりますが、前段の部分は読み手の背景や知見により省略できます。逆に言うと読み手が、ソクラテスって何?、人間はどうなるの?というレベルでしか背景や知見がない場合は、前段から丁寧に説明する必要があります。独りよがりな文を書かないようにすることが上達のコツです。

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